【気になる水道】鉛管(鉛製給水管)はどれくらい使われている?
「今、鉛管ってどのくらいあるんでしょうか?昔は結構が使われていたようですが、実際はどうなんでしょうか。」
「気になりますね。では、公の資料がありましたのでそちらを見てみましょう。」
まずは弊社のご紹介
弊社、株式会社メイプル・リンクは、創業33年のセントラル浄水器メーカーです。セントラル浄水器『ソリューヴ』の企画・製造・販売を行なっております。長年セントラル浄水器の販売を行なっている弊社が、気になる疑問についてお応えします。
そもそも鉛管って何?
鉛管とは、鉛製の給水管のことで、以前は全国で使われていました。鉛製給水管の大きな特徴として、錆びにくさと柔軟性に優れた素材で耐久性と加工のしやすさがあり、水道の開始と同時に採用され近年まで使われていました。
しかし、漏水が多いことや鉛が溶け出すことでの健康被害が指摘されるようになり、硬質塩化ビニル管などの代替素材が普及したことも伴って減少していきました。
「なるほど。」
鉛の健康被害ってどんなもの?
「鉛の健康被害ってどんなものがあるんでしょうか。」
「こちらは厚生労働省の引用があります。」
鉛は、無機鉛、有機鉛ともに職業暴露や環境汚染によって、増血系、中枢・末梢神経系、腎臓などを障害する。また、鉛は体内に蓄積し慢性中毒として、痙攣や昏睡などの鉛脳症が重大な影響として知られている。幼い子供は、成人と比べて鉛を4〜5倍吸収しやすく、身体からの排泄速度も低い。乳幼児及び妊婦は鉛による健康被害を受けやすく、慢性影響として小児に対する脳浮腫やニューロン変性を伴う鉛脳症が問題とされてきた。
「結構怖いですね。」
鉛の水質基準改正の経過
先ほどの引用資料から、鉛の水質基準についての経過を見ることができます。昭和53年に基準値を0.1mg/ℓ以下に規定後、平成4年には、これまでの0.1mg/ℓ以下から0.05mg/ℓに改正。なお、この時点では、毎日水道水を飲用しても日本人の健康に問題ないとして制定されていましたが、鉛の蓄積性について水質専門委員会の指摘を踏まえ、10年後の長期目標を0.01mg/ℓ以下に改正。
平成15年になると、省令の一部を改正する省令で0.05mg/ℓ以下から0.01mg/ℓに改正。翌年、平成16年に水質基準に関する省令で、0.01mg/ℓになりました。
「かなり長い時間をかけて段階を踏んでいるんですね。」
「因みにこの0.01mg/ℓは、WHOのガイドライン値になります。」
東京都では平成7年3月31日をもって全面新設での使用を禁止
東京都においては、明治31年の近代水道の開始と同時に給水管として採用していましたが、その後、塩ビ管やステンレス鋼管の普及・採用により、平成7年3月31日をもって全面使用禁止となっています。
東京都水道局 「鉛管はいつ頃から使用されていたのですか。」より引用
その他の自治体でも使用を禁止
平成2年度以降は、鉛製給水管の使用を中止していますが、昭和9年の創設当時から平成元年度までの間に施工された給水装置の一部には、現在でも鉛製給水管が使用されている可能性があります。
平成2年以前に建築された家屋では、鉛製給水管が使用されている可能性があります。
現在は鉛管(鉛製給水管)はどのくらい残っている?
「直近では、使用戸数は245万件となっています。また、平成19年の厚労省が1,508の事業者に行ったアンケート調査の結果では、「残存あり」と応えた事業者は612と全体の40%で、件数にして5,211,352件となっています。」
全国の水道事業者により把握できている鉛製給水管の残存距離延長は9,129km、残存給水件数は 5,211,352件であった。
厚生労働省 「鉛製給水管に関するアンケート調査結果」より引用
平成30年度末の鉛製給水管の残存延長が4,399㎞、使用戸数が約245万件(平成30年度水道統計より)で、減少は図られているものの近年は鈍化傾向にある。
「公益財団法人の資料で平成29年までの残存件数が調査されていました。平29年度で残存件数2,590,005件でした。」
各水道事業体の取組により、平成 20 年度比で平成 29 年度の残存延長は 58.7%、残存件数は 53.6%まで減少している。
公益財団法人水道技術研究センター 「鉛製給水管残存状況の推移」より引用
直近のデータを出している自治体も
「直近のデータを出している自治体もありました。」
令和3年3月末現在、羽曳野市内全給水件数49,251件中、鉛製給水管が3,344件使用されております。
龍ケ崎市 751件
牛久市 2,110件
取手市 2,885件
利根町 392件
全体(残存件数) 6,138件
茨城県南水道企業団 「鉛管残存件数(令和2年3月末現在)」より引用
「徐々に進んでいますね。でも、どうして一斉に取替え工事ができないのでしょうか。」
公道部と宅地部の管理は違う。宅地部の給水管は私有財産
原則的に、給水管は私有財産であり、メータから給水栓までの管理は給水装置所有者。つまり、宅地内の所有者が行うことになります。一方で公道部は、水道事業体による管理ということになります。
「これにより、鉛製給水管の取り替え工事の費用負担に加えて、事業者自体がそこに鉛管があることを把握していても所有者の理解がなければ交換が進まない原因になることが予想できます。」
給水装置は原則として給水装置所有者が所有していることから、メータから給水管までの管理は給水装置所有者が行うといった回答が全数であった。一方、実質的に管理等を行うことが給水装置所有者には困難である公道部分については、水道事業体による管理が大勢を占めた(97%)
厚生労働省 「給水管の管理状況」より引用
「なるほど。」
公道部と宅地部の境界線で管理が違う
宇治市 「鉛製給水管について」より引用
鉛管の取替え工事に補助金を設けている自治体もある
鉛製給水管の早期解消に向けての取り組みとして、交換にかかる工事費を一部補助する制度を設けている自治体もあります。
「費用負担で取替えが進まないのであれば、それも一つの方法ですね。」
盛岡市上下水道局は、平成15年度よりお客さま自身が行う布設替え工事に補助制度を設けています。
盛岡市上下水道局 「鉛製給水管の早期解消に向けての取り組み」より引用
【試験結果あり】有機フッ素化合物は浄水器で除去できるか試験まとめ
「いかがでしたでしょうか。公の資料を元に鉛管(鉛製給水管)の残存状況をみてみました。」
「鉛管はもうないと思っていましたが、全体としては少ない割合でも数字で見ると割と大きな印象を受けました。それに管理や所有の部分とそれにかかる費用の問題で作業が進んでいないような課題も感じました。」
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