発がん性物質ベンゼン土壌汚染事故からみる水道水混入の理由
「最近、ニュースでガソリンスタンドのガソリンが土壌に浸透し、発がん性物質が水道水に混入したという事故を見ました。でも、疑問なんですが、どうして土壌に入った発がん性物質が、水道管の中に混入するんですか?」
「このニュースは大きく取り上げられていましたね。確かに、疑問に思いますね。では、内容を見てみましょう。」
まずは自己紹介
弊社、株式会社メイプル・リンクは、創業33年のセントラル浄水器メーカーです。セントラル浄水器『ソリューヴ』の企画・製造・販売を行なっております。長年セントラル浄水器の販売を行なっている弊社が、気になる疑問についてお応えします。
どんな事故?
「報道内容をみてみましょう。」
ENEOS(エネオス)は16日、北海道室蘭市高砂地区の水道管から採取した水から国の基準を上回るベンゼンが検出されたと発表した。グループのガソリンスタンドから土壌に漏れて混入した。室蘭市は検出量が最大で基準の約760倍に当たるとし、健康被害の有無を調べている
産経新聞 「室蘭の水道にベンゼン混入 基準の760倍、エネオスのGSから漏洩」より引用
石油元売り最大手の「ENEOS」は、室蘭市にあるガソリンスタンドの敷地の地下水から、最大で国の基準の510倍にあたる有害物質のベンゼンが検出されたと発表しました。
— 中略 —
室蘭市によりますと、このガソリンスタンドがある地区では「水道水から油のにおいがする」との住民からの相談があり、ことし7月に市が調査した結果、水道水から国の基準の2倍にあたるベンゼンが検出されました。
NHK 「室蘭 ガソリンスタンド 基準の510倍 有害物質ベンゼン」より引用
「そもそもベンゼンってなんですか?」
「国立機関の情報がありましたのでそちらを見てみましょう。」
発がん性物質「ベンゼン」とは?
ベンゼンは原油1リットル当り4グラムの濃度で含まれ、自然に存在する化学物質である。これは、また、世界で極めて 大量に(1,480万トン)生産されている。その排出は、石油製品の生産工程における石炭からのコークス製造時、トルエン・ キシレンその他の芳香族化合物の生産時、消費者製品での使用、化学物質中間体、ガソリン(石油)の一成分として発生する。
国立医薬品食品衛生研究所 「ベンゼン benzene」より引用
空気中のベンゼンは、主として蒸気状態で存在し、その滞留時間は、環境および気候、ヒドロキシル・ラジカルおよび 二酸化窒素、二酸化硫黄の濃度により、数時間から数日間にわたり変化する。それは雨により除去され、約1,000mg/lの割合で地表水および地下水に溶け込み、汚染をもたらす。
—中略—
土壌中のベンゼンは、揮発により大気中に、また流亡*により地表水の流れにより大気中に運ばれる。ベンゼンが地中に埋められ、地表より深い場所で放出された場合には、地下水に運ばれる。
国立医薬品食品衛生研究所 「ベンゼン benzene」より引用
「原油に含まれているんですね。人にはどんな影響があるんでしょうか。」
ベンゼンは、健康へ多くの悪影響を与えることが知られている。ベンゼンの健康影響で最も多く報告されているのは、再生不良性貧血に導く骨髄機能の低下である。高濃度の暴露においては、これらの疾病の発生率は高いであろう。 ベンゼンは、十分に立証されたヒトに対する発がん物質である。
—中略—
ベンゼンはヒトに対する発がん物質であるため、その暴露は技術的に可能な限り最低濃度まで制限しなければならない。
国立医薬品食品衛生研究所 「ベンゼン benzene」より引用
ベンゼンは「第一種特定有害物質」に指定されている
「第一種特定有害物質?」
法の対象となる物質(特定有害物質)は、土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものとして(法第2条第1項)、鉛、砒素、トリクロロエチレン等の25物質を指定している(令第1条)。
環境省 「土壌汚染対策法の概要 特定有害物質(法第2条)」より引用
「国でも有害性が立証されているもののようですね。しかし、なんで水道水に混入したんでしょうか。」
「2023年1月現在で発表されている公式の内容をみてみましょう。」
なんで水道水に混入したの?
「当該企業の発表資料が公開されていますので、そちらが以下です。」
水道水に混入したベンゼンについて
ENEOSおよび北海道エネルギーは、本SSから土壌に漏えいしたガソリンに含まれるベンゼンがポリエチレン製水道管を透過し、水道水に混入したものと判断いたしました。
ENEOS株式会社web 「室蘭市高砂地区の水道水からベンゼンが検出された事案に関する対応について」より引用
「ポリエチレン製水道管とありますね。」
「水道管や給水管に使われる素材ですね。」
ポリエチレン管は鉱油が浸透しやすい
「厚生労働省でもその内容が記載されています。」
ビニル管、ポリエチレン管等の合成樹脂管は、有機溶剤等に侵されやすいので、鉱油・有機溶剤等油類が浸透するおそれがある箇所には使用しないこととし、金属管(鋼管、ステンレス鋼管等)を使用することが望ましい。合成樹脂管を使用する場合は、さや管等で適切な防護措置を施すこと。
ここでいう鉱油類(ガソリン等)・有機溶剤(塗料、シンナー等)が浸透するおそれのある箇所とは、1)ガソリンスタンド、2)自動車整備工場、3)有機溶剤取扱い事業所(倉庫)等である。
厚生労働省給水装置データベース 「給水装置標準計画・施工方法」より引用
「なるほど。土壌汚染が懸念される場所で、ポリエチレン管が使われていると水道水に混入するということですね。」
まとめ
「いかがでしたでしょうか。ベンゼンが水道水に混入した理由についてお分かりいただけましたでしょうか。」
「はい。国で公表されている内容と企業の公式発表の中にきちんと記載されていますね。ニュースを見て疑問に感じましたが理解できました。」
おすすめ関連記事
「以下の関連記事も、是非ご覧ください。」