熊本の水とTSMC：PFAS濃度増加と規制反対の裏側に迫る

「熊本県TSMC工場からの処理水が放水されている川で、PFASの濃度が増加したというニュースをみました。」

「確かに気になりますね。では、解説します。」

まずは自己紹介

弊社、株式会社メイプル・リンクは、創業33年のセントラル浄水器メーカーです。セントラル浄水器『ソリューヴ』の企画・製造・販売を行なっております。長年セントラル浄水器の販売を行なっている弊社が、気になる疑問についてお応えします。

TSMC熊本工場とPFAS濃度増加の現状

熊本県に進出した半導体製造の世界最大手、台湾積体電路製造（TSMC）の工場が、地域の水環境に新たな課題をもたらしています。工場からの処理水が流れ込む川で、有機フッ素化合物（PFAS）の濃度が増加し、県や住民の間で注目が集まっています。一方で、PFASを巡る規制は国内外で議論が加速しており、欧州では全面規制案が浮上する一方、日本では経済産業省が規制反対の動きを主導しているとの批判も出ています。この状況下で、半導体材料メーカーはPFASフリーの代替技術開発を進め、産業と環境の両立を模索しています。本記事では、これらの情報を総合し、熊本の水とTSMCを巡る複雑な現状とその裏側に迫ります。

半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造（TSMC）の工場からの処理水が放水されている熊本市を流れる川で、有機フッ素化合物（PFAS）2種類の濃度が増加したことが分かった。26日に熊本県庁で開催された、半導体企業の集積による環境変化を調べる委員会の会合で報告された。

産経新聞「熊本　TSMC工場からの処理水放水の川でPFAS濃度増、健康被害は確認されず」より引用

参照：電波新聞　PFAS規制の動きに対する半導体材料メーカーの動き

参照：衆議院予算委員会第七分科会　辰巳孝太郎　予算委員会第七分科会　辰巳孝太郎

参照：ＴＳＭＣ誘致で水枯渇の危機　国が将来予測示せ衆院予算委　辰巳氏

処理水放水後の川で確認された変化

熊本市を流れる川で、TSMCの工場から放水された処理水の影響が明らかになりました。県が設置した委員会の会合で、工場が本格稼働を開始した昨年末以降、今年1月に採取した水サンプルからPFASのうちPFBSとPFBAの濃度増加が確認されたと報告されています。これらの物質は、TSMCの製造プロセスで使用されているもので、海外では飲料水の濃度目標値が設定されている例もあります。しかし、今回検出された濃度は各国基準を下回っており、現時点で健康被害は確認されていないと県は説明しています。

県の対応と情報公開の限界

TSMCの生産子会社から、PFBS、PFPeS、PFBAの3種類のPFASを使用しているとの報告を受けた県ですが、具体的な物質名を公表しない方針を示しています。これは、情報が「任意の協力」で得られたものであるため、公開に慎重な姿勢を取っているからです。県は、河川水の環境モニタリングを通じて監視を続けると強調しますが、工場排水そのものを直接検査する仕組みはなく、担当者は「現在使用中の物質をすべて把握するのは難しい」と認めています。この対応に対し、県内では情報透明性を求める声も上がっており、環境への影響を懸念する住民との間で溝が生じています。

昨年末に量産をはじめた熊本県菊陽町の台湾積体電路製造（TSMC）工場について、県は、3種類の有機フッ素化合物（総称PFAS）を使用すると同社から情報提供を受けていることを明らかにした。ただ、具体的な物質名については「任意の協力で情報を得ている」ことを理由に公表しない方針を示した。

朝日新聞「3種類のPFAS使用　TSMCから報告　熊本県は物質名を公表せず」より引用

「問題が顕在化する可能性があるから公表しないということでしょうか…。」

浄化センター下流での新たな濃度増加

さらに、最近の環境モニタリング委員会の会合で、熊本北部浄化センターの放流口下流地点でもPFAS濃度の増加が確認されました。この調査は、TSMCの本格稼働後初めての水質結果として1月に実施され、半導体関連企業で一般的に使用されるPFBSが1リットル当たり59ナノ・グラム、PFBAが15ナノ・グラム検出されました。特にPFBSは、2023年8月～昨年4月の平均値6.9ナノ・グラムと比べ、約10倍に急増しています。県は「米国やドイツの目標値を下回っており、健康への影響はない」としていますが、今後の数値変化を注視する必要があるとしています。

半導体関連企業の集積を受け、水質など周辺環境への影響を評価する熊本県の環境モニタリング委員会の会合が２６日、熊本市で開かれた。一部の調査地点で有機フッ素化合物（ ＰＦＡＳピーファス ）の一種について、濃度の値が増加したと報告された。県は「現時点で（健康への）影響はないが、今後の数値の変化を注視する」としている。

水質結果の公表は、昨年１２月の台湾積体電路製造（ＴＳＭＣ）の熊本第１工場の本格稼働後は初めて。調査は１月に実施し、県によると、半導体関連企業で一般的に使用されるＰＦＢＳ、ＰＦＢＡが増加した。いずれも規制外の物質という。

増加したのは、企業排水を処理する熊本北部浄化センター（熊本市）の放流口の下流地点で、ＰＦＢＳが１リットル当たり５９ナノ・グラム検出された。監視を始めた２０２３年８月～昨年４月の平均値６・９ナノ・グラムと比べ、１０倍近く増加した。

読売新聞「「ＰＦＡＳ」の一種、熊本市の浄化センター下流地点で濃度増加…半導体関連で一般的に使用される物質」より引用

PFASとは何か、その特性と規制の背景

「永遠の化学物質」の特性

PFASは、炭素とフッ素が結合した有機化合物の総称で、約1万種類以上が存在します。耐薬品性、難燃性、潤滑性、電気絶縁性といった特性から、半導体製造をはじめとする多くの産業で利用されています。しかし、自然界でほとんど分解されないため「永遠の化学物質」と呼ばれ、環境中に蓄積するリスクが指摘されています。特に、PFOSとPFOAは毒性や発がん性が問題視され、日本ではそれぞれ2010年と2021年に製造・輸入が原則禁止されました。熊本のTSMC工場ではこれらの規制物質は使用していないとされていますが、他のPFASへの懸念は残ります。

国内外での規制動向

欧州では、予防原則に基づくPFAS規制が進んでいます。2006年からPFOSを含む製品の販売・使用が制限され、その後もPFOA関連物質が規制対象に加わりました。2023年2月には、欧州化学品庁が約1万種類のPFASを全面規制する案を発表し、現在も議論が続いています。一方、日本ではPFOSとPFOA以外のPFASに対する規制は未整備で、健康への影響が不明確な物質も多いです。環境省と国土交通省の調査では、2020～2023年度に全国14カ所の水道事業者でPFOSとPFOAが暫定目標値を超えましたが、対策が進み2024年度は超過が確認されていません。こうした状況下で、熊本の水環境への影響が新たな議論を呼んでいます。

「2020～2023年度には水道事業者でPFOSとPFOAが暫定目標値を超えていたものが、2024年度の超過は確認されていないと…。」

TSMCと熊本県の対応を巡る課題

県のモニタリングと限界

県は、TSMC工場周辺の河川水や浄化センター下流を対象に環境モニタリングを実施していますが、検査項目にPFBS、PFPeS、PFBAが含まれているかは公表していません。工場排水そのものを直接調査する体制がないため、県がどの程度状況を把握できているのか不透明です。この点について、ある県担当者は、企業からの情報提供に依存せざるを得ない現状を吐露しています。住民からは、県が積極的に情報を開示し、監視体制を強化すべきとの意見が寄せられており、行政への信頼が問われています。

住民の懸念と県の説明責任

TSMCの工場稼働に伴い、熊本市民からは水質への影響を懸念する声が上がっています。特に、PFAS濃度が増加した川や浄化センター下流が生活用水や農業用水に影響を与えるのではないかと心配する声もあります。県は「健康被害は確認されていない」と繰り返しますが、具体的なデータや使用物質の詳細を開示しない姿勢に対し、不信感を抱く住民も少なくありません。こうした状況で、県にはより丁寧な説明と透明性が求められています。

「問題がなければ開示できる内容だと思いますけどね…。」

PFAS規制を巡る産業界の動き

経産省の規制反対と批判

PFAS規制を巡っては、日本の経済産業省が欧州の規制強化に反対する動きを見せています。2023年、欧州化学品庁がPFAS全面規制案の意見公募を行った際、日本企業から提出された938件の反対意見が全体の約2割を占めました。これらの意見は、経産省が業界団体や企業に働きかけ、規制反対を促した結果だと指摘されています。ある国会議員は、経産省が企業に反対意見の提出を扇動したとして、「環境や健康より経済を優先している」と批判しました。経産省側は、産業界の理解を得るための取り組みが必要だったと説明していますが、内政干渉との声も上がっています。

半導体材料メーカーの代替技術開発

一方で、PFAS規制に対応し、半導体関連企業は代替技術の開発を加速させています。ある企業は、PFASを含まないモールド離型フィルムを開発し、金型汚れを大幅に低減しています。最先端半導体製造の効率向上に貢献しているんです。また、別の企業はPFASフリーの界面活性剤を発表し、従来品と同等の表面張力低下能を実現しました。さらに、撥水撥油コーティング剤の開発も進み、電子材料用途での活用が期待されています。これらの技術革新は、規制強化を成長の契機と捉える企業の姿勢を示しています。

熊本の水を守るための課題と展望

環境モニタリングの強化が必要

熊本のTSMC工場を巡るPFAS問題は、地域の水環境を守るための課題を浮き彫りにしています。県が実施する環境モニタリングは一定の役割を果たしていますが、工場排水の直接調査や詳細なデータ公開が欠けているため、住民の不安を完全に払拭できていません。新たに判明した浄化センター下流でのPFBS濃度59ナノ・グラムという数値は、県が今後さらに厳密な監視を行う必要性を示しています。専門家からは、PFAS全般に対する調査の強化が求められており、県がこれに応えれば信頼回復の一歩となるでしょう。

産業界と行政の連携

半導体産業は日本経済にとって重要な柱ですが、環境への配慮も欠かせません。TSMCや関連企業がPFASフリー技術を積極的に採用し、県と協力して水質保全に取り組むことが求められます。一方で、経産省の規制反対姿勢は、国際的な環境基準とのギャップを広げる恐れがあります。このままでは、日本が国際的な信頼を失うリスクもあるかもしれません。産業界と行政が一致団結し、持続可能な解決策を見出すことが急務です。

「規制がむしろ強くなっている国もあるわけですからね…。」

TSMCの熊本進出と深刻化するPFAS問題

TSMCの熊本進出は、半導体産業の発展を象徴する一方で、PFAS濃度増加という環境課題を突きつけました。川や浄化センター下流での濃度増加、県の情報非公表方針、経産省の規制反対扇動は、透明性と責任の欠如を露呈しています。しかし、半導体材料メーカーの代替技術開発は、未来への希望を示しています。熊本の水を守り、産業と環境を両立させるには、県、企業、住民が連携し、責任ある行動を取ることが不可欠です。この問題は、熊本だけでなく、日本の環境政策全体を見直すきっかけとなるでしょう。

まとめ

「いかがでしたでしょうか。熊本TSMCの工場からの処理水問題について解説しました。」

「はい。よく分かりました。」

おすすめ関連記事

「以下の関連記事も、是非ご覧ください。」