【PFAS水質基準引き上げ】環境省の新たな対応とその課題
「PFAS水質基準引き上げのニュースを見ました。」
「確かに気になりますね。では、解説します。」
まずは自己紹介
弊社、株式会社メイプル・リンクは、創業33年のセントラル浄水器メーカーです。セントラル浄水器『ソリューヴ』の企画・製造・販売を行なっております。長年セントラル浄水器の販売を行なっている弊社が、気になる疑問についてお応えします。
PFAS水質基準引き上げの背景
一部の物質が有害とされる有機フッ素化合物のPFASについて、環境省は全国の水道水の水質検査で3年連続で一定の濃度を超える値が検出されたことから、法律で検査や改善が義務づけられる基準に引き上げるかどうかの検討を本格化させることになりました。
有機フッ素化合物の「PFAS」のうち、「PFOS」と「PFOA」の2つの物質は有害性が指摘されていて、国は2つの物質の合計値を水道水1リットルあたり50ナノグラムとする暫定目標値を設定しています。
NHK 「PFAS 水道水の水質検査義務づける基準に引き上げ検討へ 環境省」より引用
全国の河川やダム周辺などから発がん性が懸念される有機フッ素化合物(PFAS)が検出されている問題を受け、環境省がPFASについて、法的義務を伴わない現行の「暫定目標値」から水道法上の「水質基準」の対象に格上げする方向で検討していることが19日、政府関係者への取材で分かった。水質検査や、濃度が一定の数値を超えた場合の水質改善といった対応を水道事業者に義務付ける。
一般社団法人共同通信社「PFAS水質管理強化へ 目標から基準に格上げ、環境省」より引用
PFASは全国の水道水から繰り返し検出されており、特に有害性が指摘されている「PFOS」と「PFOA」の2つの物質については、1リットルあたり50ナノグラムという暫定目標値が設定されています。この数値はこれまで努力義務として扱われてきましたが、環境省が2022年度の水質検査結果を公表したことで事態が変わりました。3年連続で暫定目標値を超える数値が検出されたことを受け、環境省は水質基準の引き上げを検討するに至ったのです。
「なるほど。」
水質基準の引き上げとは
現在、PFASに関する基準は「暫定目標値」として設定されていますが、この目標値はあくまで水道事業者が「努力すべき基準」にとどまっています。しかし、これが「水質基準」として法的に義務化されると、一定の数値を超えた場合に必ず改善措置を講じなければならなくなります。これは、ヒ素や水銀など、既存の有害物質に適用されている厳格な基準と同様です。
水質基準が引き上げられると、地方自治体や水道事業者に対して法的な対応が求められるため、汚染が発覚した場合には迅速な改善が必要となります。
「そういうことですね。」
吉備中央町の事例:改善の遅れが浮き彫りに
岡山県吉備中央町の円城浄水場(同町上田西)から発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)が検出された問題で、浄水場の水源だった周辺の沢やダムから国の暫定目標値(1リットル当たり50ナノグラム=ナノは10億分の1)を大幅に上回る濃度の検出が続いていることが16日、県への取材で分かった。水道水の安全が根底から揺らぎ、町の不適切な対応も指摘された問題は発覚から17日で丸1年。抜本対策が急務にもかかわらず、汚染の改善は今なお見通せていない。
山陽新聞「国基準上回るPFAS 今なお検出 吉備中央 発覚1年、抜本対策急務」より引用
岡山県吉備中央町の事例は、PFAS問題の深刻さと、それに対する対応の遅れを象徴しています。この地域では、2022年10月に円城浄水場から高濃度のPFASが検出されました。調査では、暫定目標値の96倍にもなる4800ナノグラムのPFASが発見され、汚染源として使用済みの活性炭が指摘されています。
このような状況にもかかわらず、対応が進まず、汚染の改善は見通せていないのが現状です。吉備中央町では、外部有識者による原因究明委員会が対策案を示しましたが、資材置き場の汚染土壌の除去作業は具体化していません。これが示すのは、地方自治体の対応能力の限界と、水質基準引き上げ後の対応の難しさです。
「改善できてない…。結構問題ですね。」
環境省の方針転換と今後の課題
吉備中央町のケースのように、地方自治体や水道事業者が迅速な対応を求められる一方で、技術的・財政的な負担が大きくなることが予想されます。水質基準が引き上げられた場合、全ての自治体が即座に対応できるわけではなく、特に小規模な水道事業者にとっては大きな負担となるでしょう。
また、PFASは従来の浄水処理技術では完全に除去できないため、新たな技術の導入やインフラ整備が求められます。これは、自治体や水道事業者にとって大きな財政的負担となる可能性があり、国の補助金や技術支援が不可欠です。
さらに、住民への対応も課題となります。PFASが検出された地域では、住民の不安が広がっており、血液検査などの健康リスク管理が進められていますが、今後、検査結果を受けた住民のケアや、長期的な健康管理体制の整備が必要です。これらの課題に対処しなければ、水質基準引き上げが実効性を持つことは難しいでしょう。
「全体的に追いついていないんですね。」
水質基準引き上げの意義と課題
環境省が進めるPFASの水質基準引き上げは、水道水の安全性を確保するための重要な一歩です。しかし、その実現には多くの課題が伴います。地方自治体や水道事業者の対応能力、技術的な限界、住民の健康管理など、解決すべき問題は多岐にわたります。今後、国や自治体、水道事業者、そして住民が協力してPFAS汚染に取り組み、安全で安心できる水の供給を実現するためには、より多くの資源や技術的支援が必要です。
「なるほど。」
まとめ
「いかがでしたでしょうか。PFAS水質基準引き上げについて解説しました。」
「はい。よく分かりました。」
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