浄水器は怪しい!?データからみえる本当のところ
「最近、有機フッ素化合物(PFAS)の問題や水道管の老朽化、企業の不祥事による土壌汚染など、水道に関わる事故が多い気がします。それらの対応策として挙げられるのは「浄水器」なのに、昔からなんとなく怪しいという印象がありますよね。どうしてでしょうか。」
「確かにそうですね。年々水道に絡む課題が出る中で、よく対応策として挙げられる「浄水器」ですが、まだまだ昔からのイメージがある人も多くいます。では、その辺りを深掘りしてみます。」
まずは自己紹介
弊社、株式会社メイプル・リンクは、創業33年のセントラル浄水器メーカーです。セントラル浄水器『ソリューヴ』の企画・製造・販売を行なっております。長年セントラル浄水器の販売を行なっている弊社が、気になる疑問についてお応えします。
全国調査でなんらかの浄水対策を行っている割合は6割という事実
水道対策として「浄水」に関して世論調査アンケートあるので、まずはそちらの結果を見てみましょう。2020年の国の世論調査で水道水をそのまま飲む人は全体の4割という数字が出ました。つまり、全世代的に見ても約6割の人が水道水をそのまま飲むことはせずに、浄水器の設置やミネラルウォーターの購入など、なにがしかの浄水対策を行って水を飲んでいることがわかりました。詳細は以下のリンクを参照ください。 【世論調査】水道水をそのまま飲む人が4割!?
「6割は水道水をそのまま使っていないってことですよね。確かにそれは言えると思います。少なくとも私の周りでは水道水をそのまま飲んで使っているケースは少ないですね。特に最近は、長期的な健康の観点で、元々自然派の嗜好を持つ方以外にも、食品添加物の摂取など気にする方が増えた印象なので、今後はもっと増える気もします。」
「また、東京都ではこんなデータもあります。」
東京都では70%が水道水の品質に不満も
詳しくは、以下の記事をご覧いただきたいですが、東京都水道局が定期的に行っている「東京都水道事業運営戦略検討会議」の調査報告において70%が水質に不満を持っているという結果が出ています。こちらも詳細は以下のリンクを参照ください
【東京都水道アンケート】70%が水質のカルキ臭に不満!?「なるほど。水道水に不満を持っている人の一部が、浄水対策をしているということですね。最近とにかく水道に関するあまりよくないニュースを目にします。正直、不安はありますし、とりあえず、我が家だけは対策しようと思うのは自然なことだと思いますけどね。そもそも、浄水器ってなんで怪しげなイメージがあるんでしょうか。」
浄水器のイメージを悪くした強引な販売手法
「昔は、浄水器の訪問販売などが多く、中には悪質な営業手法が問題になり、ニュースになったりもしました。」
強引な訪問販売
最近はあまり見なくなった訪問販売ですが、当時の浄水器は、悪質な訪問販売の商材として使われることもあり、それによって、よくない印象に繋がったことも一つの要因です。水回りの工事を理由に営業機会を作り強引な販売をするなど、誠意のないセールスが行われていたようです。また、それを啓発目的で、一部の問題をメディアが大きく取り上げたこともあり、浄水器の悪い印象だけが一人歩きした部分も否めません。悪質な業者は、営業仲介の立場で、利益重視で責任なくさまざまな商材を扱うので、これは浄水器に限ったことでもありません。強引な販売手法で言えば、インターネットのプロバイダ契約など、よくない印象のある商材は他にもあります。
「確かに、強引な営業とか電話とか。別に浄水器に限ったことではないですが、確かにそのイメージはありますね。」
そもそも浄水器は、主に活性炭を使って水道水を濾過するものです。濾過することで水道水内の残留塩素や不純物を除去します。特に活性炭の一般的な浄水器は、特殊な水質変化を起こすものではなく、その効用はとても単純明快です。
また、そもそも水道水には残留塩素が入っているため、試薬となる塩素チェッカーが反応するのは当然なのですが、色の変化を理由に煽るような営業を行なうケースもあったようです。特に、当時は今のようなインターネットもなかったので、訪問販売の場合、全く需要を感じていない相手に対し、売り込むことで結果その強引さが目立つことも多かったでしょう。
「必要性を全く感じていない相手に売り込んでも迷惑なだけですからね。時代ですね。確かに、当時は浄水器って塩素除去ってイメージでしたよね。ウチは今でもカルキ臭があって浄水器つけていますけど、当時は、もっと水道水が臭かったですからね。なんかケミカルな感じがして嫌でした。でも、一般的には水道水がそのまま飲めないと思わないので、あくまで浄水器は嗜好品的なものになっていた気がします。」
残留塩素の問題と品質の地域差
残留塩素の基準は1リットル当たり0.1mg(0.1ppm)以上
浄水場で塩素処理された水道水は、各家庭に供給されるまでの間、塩素の殺菌効力を保っていなければなりません。この一定程度の塩素が「残留塩素(遊離残留塩素)」です。最終的に私たちが飲んだり浴びたりして使うその瞬間まで衛生管理をするのが残留塩素の役割です。
そして、この残留塩素の濃度基準は、水道法第22条によって定められており、各家庭の蛇口(給水栓)で、1リットル当たり0.1mg(0.1ppm)以上の濃度を保持していることが義務づけられています。
給水栓における水が、遊離残留塩素を0.1mg/l(結合残留塩素の場合は、0.4mg/l)以上保持するように塩素消毒をすること。
厚生労働省 「水道法第4条及び第22条等の関係について」より引用
「0.1mg/ℓですか。なるほど。」
残留塩素の下限値が定められているが上限値はない
しかし、下限値は0.1ppmと定められている一方で、上限値は定められていません。一方で、「美味しい水」の基準が「目標値」として定められています(国:1.0mg/L、東京都:0.4mg/L)。当然、この濃度が高ければ結果的に「水のまずさ」につながっていくことになります。
残留塩素の基準値に上限がないは本当!? 【東京都】水道水の残留塩素濃度の高い地域とは?「そうなんですよね。本当に差があると思います。それに加えて、最近は本当水道関連のニュースが多いですよね。」
主だった水道の課題
「直近の主だったニュースを挙げてみます。」
有機フッ素化合物(PFAS)
2020年に環境省がレポートを発表して以降、日本全国で問題となっている有機フッ素化合物(PFAS)の問題。とりわけ沖縄県や東京都多摩市など一部地域では、河川や水道水からも検出されていることもあり、深刻な問題としてニュースでも取り上げられています。
【試験結果あり】有機フッ素化合物は浄水器で除去できるか試験 【多摩PFAS血中濃度調査】浄水器の有無で結果に差が!?水道管の老朽化問題
全国各地で起きる水道管の破裂事故。主に、経年劣化した水道管の老朽化問題に起因し、赤水などの生活被害も出ています。
【千葉県八千代】約2万1000世帯で水道水が濁った赤錆事故からみる水道の危害とは!? 【水道管老朽化】法定耐用年数(40年)超えの管路は日本列島縦断往復20回分の長さ!? 【水道管老朽化】全ての更新に130年以上も!?企業起因の事故リスク
近年多いのが、企業事故による水質事故です。
発がん性物質ベンゼン土壌汚染事故からみる水道水混入の理由 水質事故から考えるリスク管理「住んでいる人にとっては人ごとではないですよね。持ち家とかであれば簡単に引っ越すこともできませんし。現状、個人レベルで公共の水道インフラどうこうできる問題ではないので、自分たちでできるところから対策するしかないですし、その意味で浄水器をつけることもありますよね。」
浄水器は活性炭フィルターで水道水を濾過するもの
それぞれの対策とそれぞれの価値観
現状、水道水の課題解決は、各家庭の何がしかの浄水対策になります。それは、浄水器でなくともさまざまな選択肢があります。当然、住民に健康被害が及ぶような大きな事故や問題の場合は、各家庭に水が供給される前に、地元の自治体などが対策するような問題です。また、一般の浄水器も万能ではないので、将来起こるであろう未知の水道課題に全て対応できると言い切ることはできません。
「確かにそうですね。」
一方で、浄水器が活性炭などの効果で、住まいの水際対策として効果が実証されている部分があることも事実です。そもそも、供給する側の浄水場でも活性炭を使っています。そこから、全ての家庭に水道管を通って供給する際に、敢えて公衆衛生の観点で塩素を投下しているということです。その意味で言えば、簡易的な浄水器でも一定の効果は望めます。特段、高価な浄水器を買わなければいけないということはありません。
“高価”な浄水器とは、例えばセントラル浄水器の場合は、設置するお住まいの環境に応じて、設置の可否が分かれます。また、屋外での工事が必要なこともあり、総じて、蛇口に簡単に取り付けられるものに比べて、時間もコストかかり結果”高価”になります。ですので、ホームセンターで購入して終わりというわけにはいきません。“高価”になるにはそれなりの理由があります。しかし、現状「綺麗な水を住まい全ての蛇口で使いたい。」「我が家だけでも住まい全体で水際対策を行いたい。」方にとっては、セントラル浄水器はとても価値あるものになるでしょう。
「確かにそうですよね。当たり前ですが、必要のない人には無価値でも、必要な人にとっては優先度も高く価値があるものです。危機意識もそれを危機と思うかそうでないか。そもそも、事故以外でも残留塩素自体を問題視している人もいるわけで、実際、さっきのデータで水道水の品質にあれだけの人が不満を持っているという結果もあるわけですから。そもそも、一般的な浄水器の印象で判断している人は浄水器の検討段階にも入っていないですよね。」
まとめ
「いかがでしたでしょうか。浄水器の一般的な印象と実際のデータや事象について解説しました。」
「はい。よく分かりました。そもそも浄水器の課題解決の部分は明快なので、必要な人にとっては浄水器の印象は関係ない話ですね。そもそも水道関連のニュースがあると、みんなが同じような問題意識を抱えますが、それぞれ実際行う対策には温度差があると思います。」
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